奈良家の当主屋敷に・・・
数名の老人達が入った。
彼等は重々しい口を開き告げる。


「奈良シカクよ 遂に神の子等の文が途絶えた」

「やっと神の子等は神の元に召されたのだ」


広い畳の間。
上方に老人が座り、奈良シカクは下座で頭(こうべ)を下げる。
先代当主の言葉を・・・
恭しく受けるのだ。


その内心は・・・?

あー・・・確り今も外で遊んでるだよなー・・・
ま、知らないっつー事でいいけどよ・・・真面目だなー 二人は・・・

ある意味ダレていた。



「嫡子として迎えた・・・シカマルじゃったか? あの子の様子はどうじゃ?」


「ハイ 少し健康面に難はありますが・・・影の術も確りと覚えております」


「その子を・・・"闇守り"に据えてはどうかの?」


老人の言葉に、一瞬だけハッとしたのだが・・・
一切悟らせず、シカクは報告した。


「ウチハが消え去った今 奈良が前に出ても何の支障がないしのぅ」

「ウチハを越える時が来たのじゃ」



その言葉に、笑みを深めるシカクに・・・
二人の老人は気付かなかった。






「って事で お前等 下忍になれよ? "魃"と"魄"も良いが前に出ろよー」

ニヤニヤと笑いながらシカクは告げる。
そう・・・
蒼鹿と鹿白が煎餅と茶を持っている時だった。


「・・・気付いてたんですか?」

「オウヨ 母ちゃんの十八番の武具使ってるからなー」

鹿白がゆっくりと湯飲みを置いてから答えた。
その答えにもニヤニヤと笑いながら・・・

「ま、ヨシノさんも強くなったしー 良いんじゃねーの?」

「確かに・・・ お前等二人が連れてがれた時の愛らしさはなくなった !?」

蒼鹿がベリッと煎餅を噛み砕いた後に答えた。
その答えに気を良くした瞬間・・・
お玉が飛来し、シカクの頭を直撃する。


「アンタ〜!!!! 何がなくなったって?!」


数本のクナイが飛翔する。
まるで・・・獲物を狙うかの様に・・・
その瞬間からシカクの逃亡が始った。



ゆっくりと蒼鹿が茶を飲む。
パキパキと煎餅を砕きながら、口に頬張るのは鹿白。


「計画早めるかー? "魃"と"魄"の死亡説 ってか、一時退場」

「そうですね "伍班"も結構充実したので そろそろ動き出します・・・か・・・」



午後の麗らかな陽射しの元で・・・
静かに茶を楽しむ二人。
その背後で・・・
血戦となっているのだが、結界によって隔てられその影響は一切ない。






 









+++ 貴方の隣には +++

序章 突然の決別
















舞いが始る。
手には扇。
真白の輝きと蒼の輝きを纏った・・・
薄い紙によって華開く扇は儚いモノ。
ただ・・・それは武具とはなり得ない代物は・・・


闇を舞台に神具へと・・・その姿を変える。



スッと軌跡を残す真白の光。
漆黒の衣がゆっくりとその後を追う。
シンとした空気に・・・
真白のチャクラの華が咲く。


香りは錆び付いた鉄。
紅の彩りは真白に包まれ焔を上げる。


二つの蒼の軌跡が交差した。
シュッと響いた空気の破裂音。
軌跡が焔を共なって、紅を蒼へと昇華する。


舞い。
神へと捧げる舞踊。
神楽・・・




焔は命を消し去る。
一瞬にして肉塊へと変えるのは小さな扇二対。
真白と蒼の・・・



漆黒の統べる世界で咲き誇る華の舞い。
"華神楽"が行なわれた。












「「火影様 唯今戻りました(ー)」」

フッと闇からその姿が溶け出す。
先程まで何の変哲もなかった暗闇。
夜の闇から・・・



「"魃(バツ)"と"魄(ハク)" か・・・
 ご苦労じゃったな・・・と素直には言えんのぉ・・・」


ホーッと長い吐息を漏らしてからだろう。
筆を置き、額に手をもって行き・・・
ギシッと椅子深くに背を預けながら火影は言い出す。
心底疲れた様な響きは否めない。


「「如何なされましたか(どうしたんっスかー)?」」


揃った声音。
更にため息が洩れ出したのは言うまでもないだろう。


「いい加減に屋根裏から侵入するでないっっっっっ!!!!!!」



バンッと勢い良く振り下ろされた手。
机がミシッと悲鳴を上げ、コロコロと筆が転がった。
怒声と同時だろう。
目の前に現れた二人が同時に耳を塞いだのは・・・




毎度、毎度の一騒動が必須の為・・・
既に完全防御の結界によって執務室が包まれているのも・・・
毎度なのだろう。






「お主等が現れた時も・・・屋根裏からの侵入じゃったな・・・」


米神を抑えながら、火影は言い出す。
既に書物を見る事もせず煙管に手を伸ばしているのだ。
怒気を孕むものの・・・
瞳は微かに笑っていたりする。


「ま、毎度でしょ? 火影 気にするなー」

ケラケラと笑いながら"魃"が面を外しながら言う。
漆黒の髪が高く結われ・・・
長い艶やかな弧を描き背を流れる。
どこにでもいるだろう木の葉の青年。
ただ、瞳だけが独特だった。

黒曜石の様に深い色彩を宿した左眼。
純白に近い真白の色彩を宿した右眼。


スッと通った鼻筋、不敵な微笑。
漆黒の衣がより映えさせる。




「そうですね 無駄に血圧を上げますよ? それに今日は一つ提案がございます」


クツリと笑みを浮かべながら、"魃"同様に面を外す。
漆黒の髪が流れる。
結わえられていない髪がサラサラと肩を落ちた。
彼もまた何処にでもいる木の葉の青年だろうが・・・


純白に近い真白の色彩を宿した左眼。
黒曜石の様に深い色彩を宿した右眼。


陰陽を宿す瞳が・・・
漆黒の衣によってより深みを増している。





「して? 提案とは・・・」

一瞬だけ火影は遠い目をする。
現れたのも唐突だが、木の葉の忍への影響も唐突。
現在木の葉の守護の壁とされる"伍班"の編成すら・・・
唐突にやっての見せた二人なのだ。
今に始った事ではないものの・・・
ため息しか出ないのだった。


「ハイ 伍班の面子も揃ったので・・・そろそろ内勤に移ろうかと」

「で、オレ等 今日の任務で死亡な コレ 額宛 後を宜しくー」



コトッと火影の執務用の机に置かれた二つの額宛。
血濡れの・・・
傷を持つ使い込まれた額宛が二つ揃って置かれた。


「お主等!!!」 


「既に準備は整ってますので 乱入者達の対処をお願いしますね」

「だなー 元気のいい面々が飛び込んで来るから宜しくー」



再び振り下ろされた手。
怒声と悲鳴を上げた机。
だが、一切先程とは変わらない雰囲気で・・・
"魄"はゆっくりと一礼の後に闇へと溶け込む。
"魃"は笑いながら片手をヒラヒラと振り闇へと。
その一対は何事もなかったかの様に・・・
静かな暗闇が満ちた。



瞬間に、静寂な闇を破壊する強打音が響いた。
その音は煙管が置かれた微かな音を打ち消す。



「「「「「「ジジイ(爺様)(火影ぇぇぇぇ)(火影様)!!!!」」」」」」



バシッと重圧な火影の執務室の扉が破壊された。
否、開けられたのだろう。
雪崩入ったのは・・・
言わずと知れた"伍班"の面々。



「どう言う事だ? ジジイ!!」

怒気を孕む。
金色(こんじき)の髪が怒りを表すかの様に・・・
チャクラに呼応しユラリと揺れる。
蒼の瞳がゆっくりと細められ・・・
まるで獲物を得た猛獣の様に。


「爺様 いい加減に吐いて下さい "魄"さんと"魃"さん お隠しになられるのですか?」


ニコニコと笑みを零す真白の瞳。
木の葉独特の体術を操る一族の証しは・・・
楽しそうに細められるのだ。
だが、一切笑みを形どらず孕むのは凍てつく空気。



「そ〜よ 二人は何で辞めるのよ?」

「そうですね 理由が・・・ ?!」


蜂蜜色の髪の少女と大地の髪の少年が続く様に言い放った時だろう。



言葉は最後まで紡がれる事はない。
動く事の出来なかったのは黒髪の少年二人。
視線は火影の執務用の机に固定されたまま・・・


紅い、紅い雫が伝う。

傷だらけの二つの額宛。




「先程 "魃"と"魄"の"式神"が持ってきおった・・・」



悲痛そうな声音を装う。
内心では、彼奴等め・・・と苦虫を潰したかの様に毒づいているのだが・・・
一切悟らせる事がないのは流石は火影だろう。



「ッッッ 何で? 何でだよっっ たった、三〇〇だろ?! 敵はっっっ!!」

「どうして? どうして・・・こんな・・・事に・・・」


火影の二度の強打に耐えた机が・・・
最後の悲鳴を上げて脆くも崩れ去った。
響いた打撃音は弧を描いた手から。  



破壊音と重なる視界を覆う木片。
それは・・・
二つの叫びを覆う様に。



「「火影 失礼します」」

サッと動き出したのは黒髪の少年達。
頬に印が刻まれている少年が金色(こんじき)の少年を支えて。
瞳を隠している少年が真白の瞳の少女を支えて。
共に静かにその場を去る。


「火影様 引き継ぎの用意は既に師匠達によって整っています
 部隊長"魃"に"旱神(カンシン)" 副部隊長"魄"に"死魄(シハク)"が・・・」

蜂蜜色の髪の少女が伝える。
淡々とした冷静な声音。


「暗部伍班 これにて新編成での始まりを告げます」


大地の色の髪の少年が頭(こうべ)を下げる。
片膝を付き、静かに決定を待つのだ。



「ウム 承知した 今後も頼むぞ」


静寂に響いた一言。
それは・・・威厳満ち、火影の言葉だった。


「「御意」」 


サッと二つの頭(こうべ)が下げられる。
同時に・・・
一瞬で消え去る"瞬身"の鮮やかさ。
それは師匠とされる彼等の実力の証しだろう。










「して? お主等 どう言う用件じゃ? 事の次第によっては・・・」


静寂が再び戻る。
ゆっくりとだろう、二度目の火が煙管に灯されたのは・・・
ポッと火は草に燃え移る。
一度大きく肺へと送り込まれた煙が・・・
ゆっくりと吐き出された時、闇が微かな変化を映し出す。


「うわっ 火影 脅しっスか? 悪い三代目火影で「遊ぶでない!!!」


同時に響いた声音、火影はいつもの通り怒気を孕み否定した。



「ちょっと計画が予定より早まりまして・・・
 三足の草蛙を履きこなすのは無謀かと? 二足で「待て!! お主等何者じゃ!!」


ケラケラと笑う"魃"、淡々と紡ぐのは"魄"。
両極端の様だが、決して違わない姿がそこにはある。
それは火影の言葉を聞いた時にも・・・
互いに顔を見合わせ小首を傾げたのだった。


「アレ? オレ等 正体明かしてませんっけ?」

「明かしとらんぞ!!!」


更に首を傾げたのは"魃"。


「・・・奈良シカマルを忍にするって通達が・・・」


「それは旧家じゃからの それに猪鹿蝶じゃぞ? 
 病弱とも・・・内勤と言う手が・・・ ・・・って、お主等ぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


同様に首を傾げた"魄"。


「奈良シカマルか?!」


「「揃えば"奈良シカマル"です」」


一瞬の沈黙後に、ポンッと独特の音。
視界を覆う煙の中から現れたのは・・・
"魃"と"魄"を数歳減らした姿の奈良シカマル。
ただ、両眼が黒曜石の様に深い色彩を宿しているだけ。


「色々ありまして? 当主の首を絞めて下さい
 キッチリ吐いてくれますよ? 因に私が鹿白です 以後、お見知りおきを」

ニコッと笑みを零して・・・
奈良シカマルの一人がスッと前に出て一礼をする。
その瞳は・・・

左眼が真白、右眼が黒曜石へと変わった。


「そー言う事っスね オレは蒼鹿っス
 ま、コレからアイツ等にバレるまで内勤でー
 もしも緊急はシカクさんに渡して下さいね そーすればオレ等に渡るんでー」


ニッと不敵な笑みを零す。
奈良シカマルの姿が霧散し、残った一人。
その瞳は・・・

左眼が黒曜石、右眼が真白へと変わった。


彼等にとっては戻ったのだ。





「事情はシカクを呼び出そう して、どうして今なのじゃ?」


やっと笑みを取り戻した子達が・・・
"伍班"には多くいる。


虐げられる子

一族から見放された子

血筋から恐れられた子

理解なき一族の子

血の強さを示した子

里から畏怖される一族の子




彼等は背負っている。

その重荷から・・・少しの解放を得たのにだ・・・


「今だからこそですよ 彼等とは偽りを通し続けたくない 大切ですから ヒナは」

ニッコリと微笑みながら告げる。
何の気負いもなく、それが当然の様に。


「そーっスよ 今だからこそ ナルの為にも前に出ないと?」


二パッと笑って告げる。
当たり前なのは鹿白と同じだろう。





「「だからこそ 今 オレ(私)を見出せるでしょう」」



一族に消された・・・事さえも見破り・・・


あの習わしを・・・


消し去る事が出来るだろうか?





「それでは火影様 適度に手伝いますから黙っておいて下さいね?」


「頑張れー 火影 骨は拾ってやるからさー」



笑みを残して闇に溶け込んでゆく。
それはいつもの退出方法。
一瞬だけ見せた笑みに火影が息を飲んだのは・・・




 
瞳に映る色彩の所為だろう。




「この里は幾つの隠し事を子に背負わすのじゃ・・・」



吐き出された紫煙と共に・・・
火影の言葉は闇へと消え去る。
まるで・・・
闇に溶け込んだ二人を追う様に。














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☆言い訳☆ スレシカスレナル&スレシカスレヒナ でも・・・ まだ・・・余りないですね・・・ 次から・・・CPっぽい話に? 唯今アカデミー時ですね 卒業試験前? スレメンバーは・・・ま、ご理解の通りで 引き続きどうぞ〜 02・22