二つの小さい影が火影室の窓から
気配一つなく降り立った 【抱擁】 「火影様」「優秀な忍」 「「いりませんか?」」 気配もなしに突然火影室に降り立った小柄な二つの影の 声が響く。 そのことに動揺を必死に押し隠す三代目。 すぐに状況を把握しようとする。 護衛の暗部さえも気付かない存在。 いつの間にか張られている結界。 そのどれをとっても目の前にいる人物達の技量が判る。 「確かに忍不足の中優秀な忍は喉から手が出るくらい必要としているが、正体を明かしてはもらえないかの」 「「いいですよ」」 三代目はあっさりと了承の返事が返ってきたことに少なからず驚く。 なぜなら忍び込んできたぐらいだからそんな簡単には正体を 明かすと考えていなかったからだ。 二人はつけていた面を取ると三代目に向き直る。 「・・・双子か?」 「「そうですよ」」 腰まである髪を毛先で一つに束ね 右半分を白 左半分を黒で塗りつぶした面を持った子供。 「シカマルと言います」 髪を首の後ろで一つに束ね 右半分を黒 左半分を白で塗りつぶした面を持った子供。 「シカヤです」 シカマルとシカヤが簡単に名前だけを言う。 「奈良家の者か?」 「「そうです」」 二人の答えに三代目は眉を寄せる。 奈良家に双子が産まれたという報告を受けていないのだ。 受けたのは『奈良シカマル』だけ。 これはどういうことだ? 二人は確かに双子だと言った。 それは見れば確実に解る。 一卵性双生児だということが。 そして奈良家の者でもあると答えた。 よくよく見れば父親の面影が出ている。 疑いようもない事実だ。 だからこそ混乱する。 じっとシカマルとシカヤを見て考え込む三代目。 そんな三代目を見て何に思い悩んでいるのか 解っているシカマルとシカヤは苦笑する。 きっと双子ということが三代目の耳に入ってないということを・・・。 「三代目。奈良家の伝承の中に闇神(やみがみ)という存在があるのをごぞんじですか?」 「闇神じゃと!?」 「どうやら知ってるみて〜だな」 悩んでいる三代目にシカマルは聞くと驚きを隠せずに三代目は声を上げる。知っていることに少し説明の手間が省けたとばかりにシカヤは少し笑う。 「ええ、つまりそういうことです」 シカマルの簡潔な答えに三代目は眉を顰める。 「すまぬがもう少し説明してくれぬか?」 三代目の請いに対しシカマルとシカヤは一瞬目を交わすと説明を始める。 「奈良家に伝わる闇神は双子が産まれた時にどちらか片方がその力を持って生まれてきます」 「昔はそのことを隠そうとしなかったけど闇神の力は思ったよりもその力を発揮して一族がどんどん発展していった」 シカマルとシカヤが交互に話す。 「しかしそれを良しとしなかった他の一族によりその存在を消されようとしました。だから奈良の一族は双子が産まれた時は一族から洩れないように闇神の力を持った子供を護るためにその存在を隠してきました。もちろん里にもです」 「良い言い方で奉って大事に護ってきた。まあ、言い方を変えればただの監禁幽閉だけどな。外には出ることが出来ない様にしてあったし一生を一族の為にその部屋の中で終わらせるんだから」 シカヤが少し目に怒りの火を灯して言うとシカマルの目には哀しみが浮かんでいた。 しかし今の説明を聞くなら闇神として産まれてきた子供は外に出れないはずなのに今現にここにその闇神の力を持っているという子供が目の前にいるではないか。 そのことに矛盾を感じた三代目は不思議に思う。 その矛盾に気付いた三代目に少し笑うと説明を続けていく。 「しかし今回の俺達の場合は違いました」 「最初に闇神の力を持ってると思われたのがオレ、シカヤ」 「なので一族はシカヤの名前が外に出ないようにいない者として里に登録しずにシカマルの名前を登録したのです」 「だから里には『奈良シカヤ』は存在しない者として一生を終わるはずだった」 「でも暫く経ってから異変が起こりました」 「オレの中の闇神の力がどんどん弱くなっていった」 「それに比例するかのように俺の中の闇神の力がどんどん強くなっていきました。きっとこんなことは初めてだったのでしょう。一族に動揺が走る中俺の闇神の力は歴代を見ないぐらいに強くなりました」 「で今更シカマルの名前を取り消してシカヤで登録しなおすことも出来ねえから『オレ』を『シカマル』として育てることに一族はしたんだけど」 「どうやら今回は闇神だけの力だけでなく俺達の頭脳も特別だったみたいでその頃には大人達が言っていたことが多少なりとも理解できてましたので周りの大人達の異常さに気付いてました」 「まあそんな感じで『シカヤ』という存在はいないということになってますんで」 一通りの説明を聞き終わる頃には三代目は己の力が足りないばかりに自分の知らないところでこんなことが起こっているとは思いもしていなかった。確かに双子が産まれるというのは珍しいことだったので何も双子が産まれたということの報告が来ないことに関して疑問にも思っていなかったのである。 そんな自分を責めるような表情をしている三代目を見て、シカヤとシカマルはやっぱりこの人なら信用することが出来ると確信を持った。三代目のせいではないのでそれ以上自己嫌悪の中に居させることも嫌だったので先程とは違い明るい声で話す。 「確かに今までの双子だったらお互いのことを知らずに一生を過ごしたでしょうけど」 「オレ達はこの人よりちょっと頭がいいおかげで自分の半身に会うことが出来たし」 「俺達のことを理解してくれる三代目がいますし」 「「幸せですよ」」 シカマルとシカヤの言葉に三代目は少し涙ぐむ。それを隠すかのように目元に手をあてる。 暫くそうした後に三代目は目から手をどけるとシカマルとシカヤの近くに行く。 今まで何もしてやれなかった謝罪と今己を信じてくれているシカマルとシカヤを思いっきり抱きしめる。 今まで自分達でしか抱きしめあったことがなかったシカマルとシカヤはどう反応を返していいか悩む。そのことに気付いた三代目が更に力を込めて抱きしめるとおずおずと三代目の背中にシカマルとシカヤは手を伸ばして抱きしめ返す。 三人は暫くそのままお互いを確かめ合うように抱きしめあっていたのをそっと身体を離す。 「さて忍になりたいということじゃがお主達が入ってきたときの実力を見る限りかなりのものだとは思う。それで暗部ということで活動してもらうが良いか?」 「いいですよ」 「ていうかそれしかないだろうしな」 あっさりと承諾したシカマルとシカヤを少し不憫に思う。 暗部といえば暗殺なども取り扱う部署だからこのようにまだ幼い子供の内から暗い闇の中に身を堕とさせることに躊躇いを感じないといったら嘘である。 「暗部の衣装だが」 「それだったら外衣くれませんか?」 「白と黒。一着ずつ」 「?それならすぐにでも用意できるが・・・少し待っておれ」 三代目はそう言うと部屋の奥に行くと言われたとおりの白と黒の外衣を持って戻ってくる。 「これでいいか?」 「「ありがとうございます」」 受け取ったシカマルとシカヤはお礼を言うと外衣を広げたと同時に真っ二つに切る。そしてそれぞれ半分を交換すると今度はくっつける。すると最初に被っていた面と同じ様に左右白黒の外衣が出来上がった。 それを満足そうに見てフードを下ろした状態にして着込む。 唖然と見ていた三代目を気を取り直す。 「面は先程被っていたものを使用するのじゃな。それで暗部名だが何か決めておるか?」 「はい、俺は『闇夜(あんや)』として」 「オレは『灯火(とうか)』として」 「「名を変えて活動します」」 「それでは闇夜並びに灯火。ここ火影の名の下に暗殺戦術特殊部隊第四班所属とする」 「「御意」」 三代目の言葉に頭を垂れ跪く。 「それでは早速任務をやってもらうとするかの。 が儂にはまだお主達の実力がどれほどのものなのか判らないからの試しに今から出す任務をこなしてきてくれんかの?」 「いいですよ」 「でその任務って何だよ」 三代目は机の所に行き一枚の任務書を手に取るとそれをシカマルとシカヤに渡す。 いくらなんでもSランク任務からというのもきついと思ってのことで今回は無難なAランク任務を渡した。その任務は巻物の奪還とそれを持って行った抜け忍の暗殺。抜け忍が禁術の書かれている巻物を一本持って西に向かって逃走しているとのこと。 それらの内容を読んだシカマルとシカヤは一瞬目を見張る。 「なあ、シカマルこれって・・」 「あの三代目。この抜け忍が持っていった禁術の巻物って『禁術火遁の術其の参』ですか?」 「お主なんでそれを知っておる!?」 三代目の反応にシカマルとシカヤはやっぱりという顔をしているとシカマルが自分の影の中に手を入れると何かを探すようにごそごそとしていると見つけたものを取り出す。それは今し方話していた任務にある巻物だった。 「これですよね・・・?」 「そ、そうじゃが何処で手に入れたのじゃ?」 三代目の問いに答えようかどうしようか迷う。 「アー実はちょっと前に西の森の方に気晴らしの為に散歩に行ってたらその抜け忍?がいて変だなと思って声を掛けようとしたら行き成り向かってくるし自分で里を抜けたとか巻物を取り返しに来たのかとか言ってたんで殺っちゃいました」 「でその時に大事そうに持っていた巻物がこれです」 シカマルとシカヤの言葉に思わず声もなく佇む三代目。それを気の毒に思って少し苦笑をする。 三代目は我に返りならば違う任務をと思って次に出したのはかなり大規模になってきた抜け忍集団の一掃。 その任務を見た時にもシカマルとシカヤは済まなさそうな顔をして三代目を見やる。その顔を見て三代目はまさかこれも・・?と思ってシカマルとシカヤを見る。 「これって抜け忍だったんだな・・」 「変だとは思ったんですよね。皆隠れているのかこそこそとしてましたし」 「だな。そういえばあいつらの額宛に線が入ってたよな」 「ああ、そういえばそうですね。確かそれでストレス発散しても大丈夫だと判断したんですし」 次々と飛び出す意外な事実にもう三代目は開いた口が塞がらない。口を開けてパクパクと声にならない言葉を吐き出すかのようにしている。 「お主等一体何をしておったのじゃ!」 とうとう三代目が切れて叫ぶ。 「「何って・・・ストレス発散?」」 シカマルとシカヤは声を揃えて平然と答える。 「大丈夫だって殺っていい奴とそうじゃない奴はきちんと分けてるから安心しろって」 「そうですよ、安心して下さい」 飄々というシカマルとシカヤに対して三代目がまた叫ぶ。 「そういう問題ではないわ!!」 「「じゃあ、どういう問題?」」 シマカルとシカヤはまったく判らないという顔をして三代目を見る。 三代目は肩を落として俯く。 「とりあえず任務依頼と俺達がやってきたストレス発散の相手が被っているようなので他にもないか見てみますけどよろしいですか?」 「そうだな。じゃないと任務に行った時にもう居なかったりするからな」 シカマルは依頼を見ていいか聞き、シカヤは笑いながらそう言う。 三代目は疲れたようにため息をつくと一つ頷く。 「頼む・・・」 「??判りました。他にも処理できるのがあったらついでにしておきますので」 「うむ・・・」 「三代目大丈夫か?何か疲れてんな」 一体誰のせいだと思っておる!! そうは思ってもこれ以上疲れたくない三代目。ただ首を横に振って答えるだけにしておく。 それを見たシカマルとシカヤは不思議そうな顔をして三代目を見ていたがとにかく書類の整理をしようと机に向かって作業を始めた。 後にそう遠くない日に木の葉最強暗部として名を馳せる事になるシカマル=『闇夜』とシカヤ=『灯火』の最初の任務は書類整理だった。
自分達しかいなかった あとがき 今回はシカマルとシカヤが暗部に入る時の話です シリアスっぽくみせておいて 最後はギャグチックになりました 暗くなる話は駄目っぽいです 最後には笑いにいってしまうみたいで・・・ シカマルとシカヤが暗部に入った経緯はこんな感じです 隠れし者 管理人:夜那 蒼「ストレス発散大賛成!! そーだろ? 鹿白!!」 白「貴方の場合毎回ストレスありますか?」 蒼「あるってー 小狐ちゃんの事とか? 火影とか? 紫架とか?」 紫『?! 含まれるの?!』 鹿’S「「当たり前ー(ですね)」」 紫『・・・(泣言)』 蒼「お前が打たないと発散も何もねーの 片方だったのかー」 白「過去ですか? 同じに放り込まれた我々とは違いましたね 半身を・・・」 蒼「へー 鹿白 オレの事大切?」(ケラケラと笑いながら) 白「違います」(ニッコリと笑いながら) 紫『・・・(不毛と判断) ハイ 進めて行きます まだまだ夜那さまの作品続きます!!』 鹿’S「「引き続きー(どうぞです)」」 以上、紫架でした。 |
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